ぶどう農園を始めたきっかけ
農業経験もなく、若くもない私がぶどう農園をつくろうと決めたのは、ある友人からの相談がきっかけでした。息子さんが家庭や学校生活との葛藤の末、仲間を募って自ら命を絶とうとした切実な話でした。幸い未遂に終わったものの、かつて身近な人を自死で亡くした私にとって忘れられない出来事でした。
世界は、ここだけじゃない
日本の10代の死因第1位が自殺であるという衝撃的な現実。学校と家庭以外に逃げ場のない子どもたちの苦しみは、どれほどのものでしょう。けれど、振り返れば私自身もまた、正解はひとつではないはずなのに「こうあるべき」という社会の枠組みに囚われて生きてきました。大人の心が自由でなければ、子どもたちに自由を感じてもらうことはできないはずです。まずは自分自身が、窮屈な枠の外へ踏み出すこと。そして、つらい時に「世界はもっと広くて自由だ」と感じられる場所を作りたい。そんな想いが、心の中で膨らんでいきました。
大地をキャンパスに、自由に生きる実験場
ある日のこと、富山の一軒のぶどう農園の写真に目を奪われました。たわわに実るぶどうの棚下でヤギや羊がまどろむ美しい光景。その瞬間、「大地をキャンバスに、自由で楽しい空間を自分の手で描きたい」という想いが湧き上がりました。それからご縁に導かれ、その農園主のもとで1年間、無農薬栽培を学びました。50代半ばの私と間もなく還暦を迎える夫。決して早くはないスタートですが、ゼロからのぶどう園づくりが新たなライフワークとなりました。




